陪審制のいくつものメリットとは

陪審制度は、なにも単に民主主義だからとか、国民主権だからといったタテマエだけからの制度なのではありません。あくまでも、人々が権利を実現するための手続としてどういうものが効果的か、どういう手続なら望ましい裁判を実現できるかという観点から、陪審制が構築されているという点を見逃してはいけません。

アメリカではかなり効果的で強力な司法制度が運営されていますが、それは陪審制だからこそ、というところが重要ポイントなのです(もっとも、「陪審制度」の対抗馬として「参審制度」というものかおり、日本でこれから議論される「裁判員制度」は参審制度がベースになっていますが、それは後で説明します)。

陪審制になると、いくつものメリットが考えられます。第一に、裁判が速くなるのは必然であることが分かります。一般の人を陪審員として拘束する以上、審理をだらだらとやることは許されないからです。陪審審理では無駄な尋問は許されず、効率的な審理が行われます。

手続を進行させる裁判官や弁護士は、極めて迅速な裁判を実現するために努力することが必要不可欠となるのです。もっとも、陪審裁判だと素人がやるから、余計に時間がかかるように誤解している人もいるようですが、何かの判断を下すというのは、それほど時間かかかるわけではありません。

確かに、素人の方が慎重に考えますし、じっくりと評議もしますから、結論に至るまで専門家よりも時間をかけて幅広く考える傾向はあります。しかし、審理が終わったらすぐに評議をやって結論を出してしまうわけですから、日本の裁判官が何ヶ月も他の事件に手を取られて放置してしまうようなことはありません。