外資系で評価されない「できない人」の特徴

地域別では、トップのヨーロッパが二〇・〇三兆円(製造業が一二・五〇兆円、非製造業が七・五四兆円)、二位のアメリカが一一 ・五三兆円(製造業が七・四九兆円、非製造業が四・〇四兆円)、三位のアジアが一・六九兆円(製造業〇・二三兆円、非製造業二・四六兆円)となっているが、アメリカ企業の中に売上を公開していないところが相当あると推測されるので、単純にヨーロッパの企業が数も売上も多いと結論づけることはできないように思われる。経常利益は、回答した外資系企業全体で一・八八兆円となっており、先はどのように単純に回答社数で割ると、一社当たり七億円ということになる。しかし、利益を回答していない企業があると推測されること、経常利益という概念が欧米流の会計処理にはない(税引前利益ならあるが)ことから、実態よりも過少であるように思えてならない。

社外流出額を示した面白いデータもあるのでこれも紹介する。親会社(調査では、外国側筆頭出資者と表現されている)に対する支払額の総額は、○六年度で〇・五七兆円(製造業は〇・四一兆円、非製造業は○・二八兆円)とさきの経常利益額の一・八八兆円に比べると少ないが、配当金が〇・三八兆円、ロイヤリティが〇・一八兆円と経常利益のそれぞれ約二〇%、約一〇%相当であることが目をひく。合計で三〇%にのぼる社外流出(在日外資系企業から親会社へ)を多いと考えるべきか、少ないと言うべきか微妙なところだ。この調査だけから外資系の実態をうかがうことは難しいが、少なくとも五〇〇〇社に及ぶ企業が日本で活動しており、一社当たりの売上が一〇〇億円を超えると想像されることを知っておくことは無意味ではないだろう。

外資系で評価されるかどうかについて、「日本企業の尺度と変わらないか、違ってもわずかだろう」と考えていると痛い目に遭う。私自身が、身をもって体験した。大きな違いは、四つある。まず、タイムスパン(時間軸)である。次に評価者。第三に実績に対する考え方。最後は、プレゼンテーション能力である。外資系においてこの四つは、日本企業のそれとかなり違うことにまず注意を喚起したい。この四つの基準に従って、本節では「できない人」について論じる。

「タイムスパン」とは、外資系で働く人に対する評価がどのくらいの時間軸の中でなされるのかということである。外資系の多くの企業では一年間、短いところでは三ヶ月や一ヶ月という会社もある。これはスロー・スターターと呼ばれる、力を出すまでに少し時間がかかる人にはつらい。まず人間関係を作って、それを活用して仕事をするタイプの人には、この短期(超短期と言ってもよい)の評価は、チャンスを与えられる前に舞台から降りろと言われているのに等しいかもしれない。ほとんどの欧米企業、アジアや他地域に本社を置く外国企業の決算期は十二月である。年末まで、さらに限定すれば一月から十月半ばまでの評価を、十月の残りと十一月で行なうため(十一月の実績はぎりぎり年度内のものとされることもある)、外資系企業では十二月はほとんど稼動しない状況となる。

これを知らずに外資系で働いていて、年末に向けて仕事を完了しようと考えていると、「タイムーアウトー」ということになってしまう。夏休みが終わると同時に売り込み攻勢をかける外資系企業が多い真の理由はこれである。十月半ばまでに駆け込みでも実績を上げていないと、その年の評価が悪くなり、ボーナスが少なくなる、あるいはゼロとなる可能性が極めて高いからだ。実績のところで再び述べるが、外資系では仕掛りの仕事は業績にカウントされない。従って、短期間で仕事に目処をつける、あるいは秋までに業績を示すことのできない人が外資系では「できない人」ということになる。