危険な電磁波をさえぎってくれる

宇宙に存在するすべての天体は、電磁波のかたちでエネルギーを放射していますが、天体の表面温度が高ければ高いほど、その波長は短くなります。太陽の表面温度は六〇〇〇度に上りますので、太陽から放射される電磁波は波長がきわめて短く、ほとんと○・ニミクロン(μ)から〇・四ミクロンの範囲にあって〇・五ミクロンのところでエネルギーの強度が最大となります。可視光線として人間の目にみえる電磁波の波長は、〇・三五ミクロンから〇・七ミクロンの間で、太陽からのエネルギーの半分に当たります。波長が〇・三五ミクロン以下の電磁波は紫外線で、さらに波長の短い部分は、つよいエネルギーをもっていて、生物が直接浴びたときには、死を意味します。

地球の大気は、地上一〇キロメートルから四〇キロメートルにかけてオゾン層でおおわれています。オゾン層は、波長〇・二九ミクロンから○・三一ミクロンの電磁波をほとんど完全に吸収してしまいます。そのため、紫外線をはじめとして、つよいエネルギーをもった電磁波はごくわずかしか地表にまで到達しません。地球の歴史で、このオゾン層がつくられるまでに何十億年というながい時間がかかっていますが、生物が海のなかから出て、陸に上がることができたのは、このオゾン層がつくられて、危険な電磁波をさえぎってくれるようになったからです。

ところが、近年、オゾン層が破壊されて、大きな穴ができはじめていることがわかりました。その原因はフロンガスによるものです。フロンガスについては、あとでくわしくお話したいと思います。太陽から放射された電磁波はさらに、大気中の雲や気体分子によって吸収されたり、散乱されたりして、ごく一部分だけが地表に到達します。とくに、波長が〇・七四ミクロンより長い赤外線は、水蒸気によって吸収され、また、波長ニミクロンの周辺も二酸化炭素によって吸収されてしまいます。しかし、波長が〇・三五ミクロンから〇・七ミクロンの範囲内にある可視光線は、そのほとんどが地表にまで到達します。つまり、大気は可視光線については透明であるということになります。

地球は、地表の温度が一五度で、太陽よりずっと低い温度です。地球から放射されるエネルギーは赤外線のかたちをとり、大気中にある水蒸気、二酸化炭素などによって吸収されます。この熱子不ルギーはまた地表に向けて再放射され、地表の温度を高める役割をはたすわけです。そして大気の温度がある程度高くなると、その熱エネルギーは宇宙空間に向けて放射されることになります。このように、大気はちょうど温室のような働きをしているわけで、二酸化炭素などの気体が温室効果ガスとよばれるのは、このためです。

さまざまな気体が太陽と地球からの放射をどのように吸収するのかを示しだのが図です。この図からわかるように、太陽からの放射と地球からの放射とはまったく波長の異なる電磁波のかたちでおこなわれています。温室効果ガスは、二酸化炭素、水蒸気のほかに、オゾン、メタン、亜酸化窒素、フロンガスがあります。